2010年8月18日水曜日

MI5 vs IRA

Cambridge UniversityのChristopher Andrew教授の著書"The Defence of the Realm~the Authorized History of MI5"を読み進めています。英国MI5の公式史書で、索引や脚注、写真などを含めて1000ページ以上あります。アイルランド関係で、興味深い一説を見つけました。

第一次世界大戦中の1916年春、大英帝国の支配下にあったアイルランドでは、一部の愛国者達が一方的な独立を宣言し英国に戦争を挑みます。「イースター蜂起」と呼ばれるのですが、この蜂起が後々の独立への第一歩となったため、アイルランド国民はマイケル・コリンズをはじめ、この時の志士たちを英雄視しています。一方で蜂起が、後に英国と結ぶ合意内容をめぐる内戦やIRAへの発展の元になったことも、反面の史実です。

Andrew教授の本によると、英国は第一次大戦で交戦中だったドイツ側への傍受から、蜂起の計画を事前に察知していたというのです。ドイツがアイルランドの独立派を陰で支援しようとしていたからでした。英国はアイルランド側へ思いとどまらせようともしましたが、それでも蜂起は起こり、英国軍によって数日で鎮圧され、首謀者ら16人が処刑される結末を迎えます。

同書の後段、1970-80年代のテロ対策などの章でIRA関係にページを割いていますので、これから先が楽しみです。

Andrew教授については、アメリカの情報機関出身の先生達も、"Queen's Intelligence"とか"Queen's Eye"などと表現して敬意を示していました。

http://www.hist.cam.ac.uk/academic_staff/further_details/andrew.html

私が知ったのは、今から約十年前、旧ソ連から英国へ亡命した元KGB職員の証言をまとめた、"The Sword and the Shield: The Mitrokhin Archive and the Secret History of the KGB"が出版された頃です。テレビのCBSドキュメントでピーター・バラカンが紹介するのを見て、アマゾンがないその時代、新宿の紀伊国屋書店で急いで買いましたが、あまりの分厚さと難しさに何度も挫折しました。

同書は、米・Georgetown Universityの講義でも、参考図書の一つとして挙げられていました。米国関係で挙げれば、"For the President's Eyes Only"もAndrew教授の著作で、広く読まれている重要図書です。

"The Sword and the Shield"とは、KGBのエンブレムのデザインから取られたタイトルと思われます。同書は私が歴史の裏側に強い関心を持つきっかけとなった一冊だったことから、このブログ名に借用させてもらいました。

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