2010年11月9日火曜日

PKO and Intelligence

Reading Week明けの月曜日、Resolving & Managing Conflictの講義で国連PKOの概説がありました。先のエントリーで紛争介入・解決におけるintelligenceについて触れましたが、この日の講義でも取り上げられました。

担当教授で学科長のJohn Doyle博士は「ad-hocではあるが、intelligenceは当然活用されている。だが、アメリカやイギリスをはじめ、安全保障理事国のP5(Permanent Five)に限られるのが実情だ」とのことです。PKOは安保理決議によって実施されるためですが、派遣先相手国に関するintelligenceは意思決定レベルにとどまります。そして平和維持活動の現場レベルでは、情報交換・共有はあってもintelligenceは共有されません。

それもそのはずで、そもそもintelligenceは意思決定者decision makerのために、危険を冒して現場から集めた情報の分析と集約の産物だからであり、一国が易々と他国、ましてや危険を冒して現場に来ていない国に与えるわけがありません。そういう意味では、米国と英国の安全保障における同盟関係がいかに蜜月かという事実が理解できます。Georgetown SSP教授で、米国防大学 The National Defence Universityの教授でもあるRichard Russell博士が「Security Studiesは第二次大戦後、米国と英国で築き上げた」といっていたのを思い出しました。日本の政治家がしばしば「日米は強固な同盟関係にある」と手垢のついたフレーズを声高に叫びますが、それは東アジアやせいぜい太平洋地域においてのことにすぎません。

John Doyle
http://www.dcu.ie/info/staff_member.php?id_no=501
http://www.ria.ie/our-work/committees/committees-for-the-humanities-and-social-sciences/international-affairs-committee/biographies.aspx
Richard Russell
http://explore.georgetown.edu/people/rlr8/?action=viewgeneral
http://nesa-center.org/faculty/russell

話がそれますが、米英に関して言えば、国連安保理決議もなく、しかも、たった一本のガセ・ネタ元の情報で第二次イラク戦争へ突入したのは、戦略的に愚かとしか言いようがない訳です。この問題に関しては、intelligenceのpoliticization(政治化)にも原因があるのですが、ここでは触れません。

いずれにせよ、P5にはなりえない日本が他国から敬意を表される、頼りにされる存在となるために何をすべきか。あるいは、後方支援や資金援助、選挙監視と警察指導の現状のままでいいのか。憲法解釈・改正論議も重要ですが、その点に終始しない議論を期待したいです。

intelligence活動の80%はopen sourceの収集と分析と言われます。Doyle博士によると、それはPKOにも当てはまるとのことです。このクラスでは以前、「紛争の兆候をどう察知するか」という課題が出され、International Crisis Groupの"Grisis Watch"で一つの紛争国を取り上げて各自で分析しました。International Crisis GroupはNGOで、世界各地に調査員を派遣しており、アジアではタイ・バンコクに拠点があるようです。

Grisis Watchを見るとわかるのですが、まれに突っ込んだ情報が掲載されているものの、大体が報道や政府発表のまとめです。ネットでは国別に7年前まで遡って見られるので、中期的な情勢変化をつかむには良い目安となるかもしれません。ただ、Doyle博士は「Grisis Watchはopen source intelligenceとは呼べない」と指摘していました。

International Crisis Group:Grisis Watch
http://www.crisisgroup.org/en/publication-type/crisiswatch/2010/crisiswatch-87.aspx

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