2011年3月6日日曜日

Irish Politics / Corruption

日本での博士課程研究を終えて最近帰国したアイルランド人の知人と久しぶりに話す機会があった。私もアイルランドに来てもうすぐ8カ月が経とうとしており、お互いの日愛観をぶつけ合った。

「アイルランドの政治は終わっている」と知人は言う。理由を聞くと、2月25日投票の総選挙で第一党となったFine Gael (統一アイルランド党)について、「今回の選挙に勝つことだけが目標だったからだ」という。Fine Gaelは、EUからの財政支援の利子を下げさせることを掲げて大勝したが、知人に言わせれば、「選挙目当ての公約」で実現困難、というところだろう。実際、ドイツのメルケル首相は利子引き下げを早々と拒否。また今後、独仏を中心としたEU加盟各国から、アイルランドの法人税率(12.5%)引き上げを求める圧力が再び増すかもしれない。Fine Gaelはそれらにどう立ち向かうか注目だ。

一方、歴史的惨敗を喫して政権与党から転げ落ちたFianna Fail(共和党)については、「銀行業界との癒着(Corruption)がひどすぎる」と怒りを露わにした。「ケルトの虎の奇跡」による好景気と、その後の不動産バブルに踊って融資を垂れ流し、バブルが弾け、不景気で債権が焦げ付いた銀行業界を税金で救ったのは、前政権与党のFianna Fail。その結果、国の財政を極端に悪化させ、今回の総選挙で惨敗した。国の屋台骨を揺るがす財政赤字は、政と民の癒着が原因と言わんばかりだ。

「Fine Gaelは今の民主党、Fianna Failは自民党というところだろう」。日本通の知人はしたり顔でそう例えてみせた。それならば、今後のアイルランド政府が指導力を発揮できず、どう混乱していくのか、しかとこの目で観察したい。

ところで、独・ベルリンに本部を置く"Transparency International"というNGOがある。1993年に設立され、世界各国の癒着・腐敗ぶりを調査し、毎年ランキングを出している。

http://www.transparency.org/policy_research/surveys_indices/cpi/2010/results

2010年分の透明性ランキングをみると、デンマーク、ニュージーランド、シンガポールが1位で、アイルランドは14位、日本は17位だった。2001年まで遡ってみても、日愛両国は似たようなランクで抜きつ抜かれつしている。腐敗した世界の他の国々に比べれば、アイルランドとFianna Failも、日本と自民党もまだまだマシということなのだろうか。

アイルランドの銀行業界では、各行がAnti-Money LaunderingやCompliance職の募集を現在も行っている。知人が「癒着している」と名指しした、財政悪化の元凶ともいえる業界の実態を覗いて確かめたい気がしている。